伊地知のコモンズ=センス

朝の散歩


今朝、雨が降ってきそうな灰色の空の下で散歩をした。
最初に玄関のドアを開けたら、ポツン、ポツンと雨が降ってきそうな気がして急いで洗濯物を屋内に移す。その後、再び玄関で外の景色と睨めっこをしたのち、そのままギャンブル感覚で家を出発した。今日の散歩では、携帯を持たずに家の鍵だけを持ち歩き、さらにまだ歩いたことのない道を行くことにした。急な坂道を登り、幅が20メートルぐらいはある大きな道路の横断歩道を渡り、見知らぬ「住宅街」へ入っていった。散歩する前には、少しだけ歩いたらすぐに引き返そうと思っていたのだが、足がどこかに導かれるようにどんどん歩いて行った。この方向に行ったら何か面白いものがありそうという身体感覚だけを頼りに、未知の領域を通過する。途中で「この先、行き止まり」と道路に白く書かれた細い道があったが、ほんまかいな?と思って進んでみた。案の定、先程渡ってきた大きな道路の位置から数百メートル離れたところにわき道として通じており、目の前にはホテルの色鮮やかな看板があった。あの、全然行き止まりじゃなかったんですけど。朝早かったからか、車以外に動くものはなかったため文句を言う相手もいない。仕方がないので、そこからすたすたと歩いたら、ラーメン屋さん、結婚式場など「家の近くにこんな建物があったのか」と疑ってしまうぐらい面白い発見があった。一度通ると、「あの道はここにこんな形で通じていたのか」と膝を打ったり、「この道路では看板がマーケティングツールとして使われ、運転する人はターゲッティングされているのだな」とビジネマンの思考の断片のニオイを感じるぐらいで、私の身体はひどく興奮しているようであった。その後も、(携帯電話を持たずに)歩いていたのだが、全く知らない道を歩いているにもかかわらず、気がついたら家に着いていた。帰るときは「三次元の空間パズル」のピースをイメージして、それを少しずつ埋めるように帰ろうと意識はしていたが、おそらく、携帯電話を身につけなかった容量だけ身体が賢くなって「あの道をああいうふうに曲がれば安全は確保されるだろう」と無意識で体が動いていたのだろう。
帰ってきてから服を脱ぎ、バスルームに直行する。昨日新しく使い始めたオリーブ入りの石鹸を使ってネットで泡を作って体を洗う。まあ、このオリーブ入りの薄緑色の固形石鹸の泡立ちのよいことよいこと。いつもは赤色の箱に入った安めのものを使っていたので、その違いに驚愕した。昔のテレビのコマーシャルで、白い泡を手にした女性が手のひらをひっくり返しても落ちないぐらい「もちもち」の洗顔料が宣伝されていたことがあったが、その光景を目の前で思いがけないかたちで再現できてしまったことに少し感動した。
(おっと、今回はこんなことを書きたかった訳ではなく、受験について少し書こうと思っていたのだが、このままでは内容の鮮度が落ちそうなので、ひとことだけ書きますね。)
今日は子供のいるある女性(といっても、もう知り合って数年になり、かつてはそのご家庭にお邪魔したこともある)から受けた相談のうち、「急に泣きだした」息子についてのものがあった。ちょっと脱線するが、家庭教師の立場を強調するときにはこの相談主を「ご家庭」、「お母様」、「母親」とか表現していたが、いまいちいい表現が見つからない。(昔出会った関西出身の家庭教師は「おかん」と言っていた。)
話を戻して簡潔に話すと「目の前にいる息子が急に泣き出してしまったが、その原因がわからない。どう声を掛ければいいのか。」というものであった。この相談はメッセージで送られてきただけだったので、普通はもっと話を詳しく聞いてみたり、実際に会ってみないとよくわからないことが多い。先方も私も全くわからず、本人にしかわからないという状況で、その息子も何も話そうとしないということだったので、「今は何も言わずに、ただ横にいるだけでいいと思います。話は本人が言えるタイミングで聞いてみればいいと思います。」とメッセージを送った。そのあと何回かメッセージをやりとりした後に、以下のようなメッセージを送った。

「こういう時にどう対処するかが、今後の本人の課題になるかもしれません。『前例のない問題』が目の前に現れても、目の前のあり物や手持ちの資源を使ってなんとか対処できるようになるために。」

しばらく時間が経ったあと、先方からこんな返信があった。

「前例のない問題が目の前に現れた時、自分で対処する力を身につけるのが大切。。ってことですよね。
確かにそうですね、大人になるとそういうことにたくさん直面するから。」

そして、

「今日はただそばにいた。

それで少し落ち着いた頃に、

言いたくなかったら無理に言わなくてもいい。けど、子どもだけでは対処できないことがもしあったとしたら(何か事件に巻き込まれた、とか)迷惑かけるとか思わなくていいから大人に相談していいんだからね。

と話しました。」

と報告があった。

時間が解決してくれることを望むばかりである。(kさん、息子さんにこの投稿を見せて、同じように散歩させるのはいかがでしょう?)

(2024-04-13)