伊地知のコモンズ=センス

インドカレーの思い出


今日は朝からのんびりと過ごそうと思っていたが、部屋のあちこちを見回すとまだ読み終わっていない本や「積読」されている本、そして買ったことすら忘れていた本たちが散見される。
部屋のどの壁を見ても、首をどの方角に動かしても、「早くこの本を読まんかい」と必死に訴えている本たちで溢れ帰っているので、文字通り「四面楚歌」状態になっている。
よーし、いいだろう。そこまで言うなら、読んでやろうじゃないか。
というようなことを考えながら、室橋裕和『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(集英社新書、2024年)を手に取る。
そして、「のんびり」読む。

そうそう、この本は先月100頁ぐらいまで確かに読んでいたのだが、どういうわけかそのまま読み止まったままなのであった。(最近はこういうことがよくある。)
やろうと決めたことを後回しにすると、決めたときに実行するよりも何倍もの労力がかかってしまう、というなんとかの法則というのがあるらしいが、これは真(まこと)かもしれない。(いやあ、恐ろしい。)
念のために言い訳をさせていただくと、今月はかなり忙しかった。
三週間前には「ご近所」さんと一緒にインドカレーを作り、二週間前には山梨に「出張」に行き、一週間前には茨城に赴き、そして今日は自宅で『カレー移民の謎』の世界への「旅」である。先月末にはまさか5月がこのようなスケジュールになるなんて思いもしなかったので、こういうことが「度」重なるというのは誠に不可思議なものである。

『カレー移民の謎』への「旅」が、Uターンの「U」の字の底あたりまで進む。(半分ぐらい読み進めた。)
うーむ、かなり面白いと言えばもちろんそうなのであるが、この本には「なぜ、日本にインドカレーが上陸したのか」という歴史的な経緯やその起源に迫る刺激的な内容だけでなく、インドカレー・ビジネスのダークサイドな側面についても生々しく書かれている。
おそらく、今までインドカレーを食べたことのある日本人で、かつこの本を未だ読まざる者がこの本を一読した暁には、インドカレーに対する見方や味方(味のことね)が一変すること間違いなしであろう。私と同じインドカレー好きの諸君には、ぜひともお読みいただきたい一冊である。

私はときどき「インドカレーを食べた」とか「インドカレーが大好物である」といったことをこのWeb日記に書くことがあるが、それを読んで「ただのインドカレー好きやん」と思っておられる方がいらっしゃるかもしれない。
そのイメージの通り、私は「インドカレーが大好き」ではあるが、「ただのインドカレー好き」ではない。確かにインドカレーを食べ始めたときはそのような「インドカレー小僧」ではあったかもしれないが、徐々に私の中で「変化」があった。
当時の私は埼玉のお気に入りのインドカレー屋さんにかなりの頻度で足を運び、その(私にとってはとてもとても贅沢な)インドカレーを一口食べる度に「どうして、こんなに(この店の)インドカレーは美味いのか」と頬杖をつきながら考えていたものだった。毎回毎回、そのあまりのおいしさに圧倒されて嘆息し、その姿はまるで堀辰雄の『風立ちぬ』を片手に持った青白き文学青年のごとき様相を呈していたが、それがある時突然「目覚め」た。
もう何年も前のことになるが、こんなことがあった。
大学一年生だった当時、私は幸運にもそのお店から徒歩5分ぐらいの場所に住んでいた。
私があまりにもその埼玉のお気に入りのインドカレー店に通いすぎるものだから、当然の成り行きでお店の店主に顔を覚えられ、仲良くなってしまった。「お友達」といっても差し支えなかったと思う。
実は、このお店は私が初めて「インドカレー」に出会った運命店である。
ある日、私はそのお店で午後2時50分頃にいつものようにインドカレーを食べていた。
インドカレーのレストランは、そのほとんどが15:00から17:00までの間で一旦お店が「Closed」する。私もその日はなんとか15:00までには食べ終わろうとしていたのだが、「ゆっくり食べテ、大丈夫ダヨ」と店主から言わたこともあり、じっくりとその店のインドカレーを味わって食べていた。
15:10ぐらいになって食べ終わり、いつものようにインドカレーの「ポイントカード」にスタンプをもらって会計を済ませて店を出ようとすると、店主から呼び止められた。
「ちょっと、コレについて教えテください」
A4サイズの書類を渡され、何だろうと思って目を通してみると、なんとそれはこのお店の確定申告書だったのである。
その日は年が明けてからしばらく経った日であったということもあり、ようやく事情を理解した。
私はそのあと30分ほどそのお店に残って、その店主に年収を聞いたり、お店の売り上げを聞いたり、その他諸々のことを聞きながら必要事項をその書類に記入し、なんとかそのお店の確定申告書作成に「猫の手」を貸すことができた。実は、私はそれまで「確定申告」という言葉すら知らなかったのである。そのため、その場で自分の携帯で記入方法を調べたり、その他必要そうなことを何とか調べ、素人ながらに何とか(ヘトヘトになりながら)記入を終えることができたのだった。
あれは、今思い返してもなかなかいい経験だったと思う。
私以外に、自分が通っていたインドカレーのお店で確定申告書を頼まれて作成した人がいらっしゃるのだろうか。(たぶん、いないと思う。)

そんなこんなで、私とインドカレーの間には様々な「ドラマ」があった。
今ではご覧の通りインドカレーに関する文献を読み、インドカレーのレシピ本を数冊購入し、インドカレー専用のクミンやガラムマサラ、ターメリック、コリアンダーといったスパイスを自前で揃え、自宅でもインドカレーを作るまでに至ったのである。
自分で作ったインドカレーの味はもちろん、私がこれまで食べてきたお店の味に比べたら遠く及ばない。やはり、その道のプロフェッショナルが手作りするものは格別であり、その味も(言うまでもなく)一流である。
そんな当たり前のことに気づくのに、私は5年以上も時間がかかってしまった。(ああ、インドカレーのコックのお友達が欲しいよう。)
今となっては、疲れたときにそのインドカレーのスパイスの匂いをクンクンと嗅ぎ、「すぐ元気になりたい」と思ったときにはさらに少しだけスッパイシーなスパイスの匂いをくんくんクンクンとイッパイ嗅いでいる。これぞ、エナジードリンクにも勝るイジチのエナジーアイテムである。(よい子のみんなは、決してマネをしないように。)
ともかく、ここで書きたかったことは「私がインドカレーから学んだことは(意外なほどたくさん)たくさんあった」ということである。
嗚呼、こういうこと書いていたらまたインドカレー食べたくなってきた。
「ハァハァハァ」とよだれが出てしまいそうである。(あ、それは犬か。)
(…)
一息ついて、桐島洋子『聡明な女は料理がうまい』(アノニマ・スタジオ、2012年)を読む。
ふむふむ、やはりこれはなかなか面白いエッセイだ。
数年ぶりに読み直して「早くブログにこの本のことを書かなければ」と思っていたら、いつの間にか数ヶ月が過ぎてしまった。(ナンでやねん。)

よし、5月末までにはアップしよう。(あ、今カレンダー見たら5月末って今日じゃないか。)
と書いたが、やっぱ今のなしで6月末までにしよう。
(ナンでもいいから、とりあえず書いちゃおう。)

(2025-05-31)